万里の果てに

日々の日記と好きなものについて

ばっけの天ぷら

ふきのとうのことを、宮城県岩手県のあたりでは「ばっけ」という。そのほうが馴染みがある。ふきのとう、などと言われるとなんとも他人行儀である。

 

学校ではちゃんと「ふきのとう」と教わる。他所の地域の人と話すときに「ばっけ」などと言っても伝わらないことは知っているので、「ふきのとう」と言うことはできる。しかし「ばっけ」は「ばっけ」なのである。

 

「ふきのとうの天ぷら」はまだいい。お品書きの「本日のおすすめ」に筆でこう書いてあったら注文する。(「ばっけの天ぷら」だったらニコニコしながら注文する。)しかし「ふき味噌」はないだろう。あれは「ばっけ味噌」だ。「ふきのとう味噌」でもない。語呂が悪すぎる。あれは「ばっけ味噌」だよ。それ以外の呼び名は認めない。

 

冬が過ぎて春の訪れを最初に教えてくれるのは、ばっけだ。雪の下で着実にいのちを育んでいる。そして、冬の間雪かきをがんばったご褒美のように現れるのだ。

3月にもなると、摘み取られてパックに入ったばっけが産直やスーパーに並ぶようになる。それを天ぷらにしたり、ばっけ味噌にしたり、刻んで味噌汁に放ったりする。春の香りがたまらない。冬を耐えたご褒美に、胸がいっぱいになる。

 

友人に誘われ行った小料理屋で、まさに「本日のおすすめ」に「ふきのとうの天ぷら」があった。ちょうど前日に、この本を読んだばかりであった。

 

 

天婦羅屋さんでのエピソードで、ふきのとうの天ぷらを揚げるときのコツの話が出てくる。葉をきれいに広げて揚げるのが、なかなか自分では難しい。

しっかりと葉が広げられた美しい天ぷらが出てきたのを見て、友人に「これはね」と講釈を垂れる。この友人のお母さんの作る「ばっけ味噌」はとてもおいしい。今年もおすそ分けを期待して、ばっけを摘んで届けよう。